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ボーリングによる地質調査はなぜ必要なのか 目的別手法と費用相場

2023年10月27日

世界でも有数の地震大国である日本においては、ボーリングによる地質調査は建築工事に必須のプロセスといえます。
しかしながら、コストの面で調査に二の足を踏みたくなる方も少なくはありません。

ここでは、ボーリングによる地質調査の必要性と目的別の工法を詳細解説し、費用相場も紹介します。
記事を読むと、ボーリングによる地質調査の重要性を理解できるでしょう。
導入に前向きになること間違いなしです。

ボーリングによる地質調査はなぜ必要なのか 目的別手法と費用相場

ボーリングによる地質調査の必要性

ボーリングによる地質調査は、建築予定箇所の地盤状況を知るために行われます。

すなわち、建物の基礎をどうするか杭をどのくらいの深さまで入れればよいかを調べます。

現実問題として、建築物のすべては地球の表層を覆う土の上に建てられます。
しかしながら、建築予定箇所が軟弱地盤では建物を支えられません。
また、ビルやマンションなどの大規模建築の荷重は表層の地盤では支えられないケースも出てきます。

ボーリング調査は土地の長所や欠点を知り、建築後のトラブルを防ぐために必要な調査です。

ボーリングとは地質調査のプロセスのひとつ

ボーリングとは地質調査のプロセスのひとつであり、孔を掘って地盤の状況を調べる調査方法です。

地質調査とは山地から低地、海底など、あらゆるフィールドにおいて行われます。
地盤の成り立ちや形、質・特性を明らかにする調査です。

ボーリングの他に、スウェーデン式サウンディング試験や原位置試験、サンプリング・動態観測・物理探査などが行われます。

中でもボーリングは建設工事に欠かせない基本的な調査です。
建設工事はボーリング調査の結果を受けてから、建物の支持基盤を決定します。

調査内容は専用の掘削機で孔を掘り土の採取や地下水位測定、標準貫入試験などです。
ボーリングの調査結果によって、杭を打つ深さや地下水の処理などを決定します。

ボーリングによる地質調査の3つの目的

ボーリングによる地質調査の目的は、主として以下の3つに集約されます。

1.コアの肉眼鑑定
2.ボーリング孔を使用する各種試験や測定
3.計器設置による観測・監視

コアとは、ボーリングによって採取した円筒状の土壌サンプルです。
肉眼で土質や地質、風化・破砕状況を確認します。

また、ボーリングによる孔の壁面や底面の物理的性質、地下水の状況を各種試験によって測定調査します。

孔の中に計器を設置するのは地下水の流れ方や水圧、地盤の変化などの継続的な観測が目的です。

地質調査の目的別ボーリング工事の種類

ボーリングには、目的別に以下のような工法があります。

1.コアの肉眼鑑定にはロータリー式ボーリング
2.計器設置による観測・監視にはパーカッション式ボーリング
3.砂質土や不飽和土には気泡ボーリング
4.深部のコア採取にはワイヤーライン式ボーリング
5.表層地盤の調査にはオーガーボーリング

それぞれについて解説します。

コアの肉眼鑑定にはロータリー式ボーリング

コアの肉眼鑑定にはロータリー式ボーリングが用いられます。
ロータリー式ボーリングとは、ビットを取り付けたコアバーレルの回転により地盤を掘削する工法です。

地質調査の中で最も一般的であり、表層から深層まであらゆる地層に安定した掘削能力を発揮します。

コア採取の連続により、詳細な地質データを把握できるメリットがあります。

計器設置による観測・監視にはパーカッション式ボーリング

計器設置による観測・監視にはパーカッション式ボーリングが用いられます。

打撃による岩盤破壊で掘削を進め、堀った屑を汲み出しつつ孔壁を泥などで補う手法です。
コアの採取調査ができない代わりに、孔壁が堅牢となるため計器設置に適しているといえるでしょう。

他工法に比較して安価であり、狭い敷地で作業できるメリットがあります。

砂質土や不飽和土には気泡ボーリング

砂質土や不飽和土の掘削には気泡ボーリングが適しています。
ロータリー式ボーリングの一種であり、砂質土や不飽和土など水分の少ない土壌掘削を目的として開発された工法です。

界面活性剤と水・空気の混合により気泡を発生させて少ない液体量でスライムを除去します。
そのため、土壌特性をほとんど変化させずに高品質のコアを採取できます。

深部のコア採取にはワイヤーライン式ボーリング

深い地層のコア採取にはワイヤーライン式ボーリングが適しています。

ワイヤーライン式ボーリングはロータリー式ボーリングの一種であり、連続してのコア採取が可能です。

採取したコアはインナーチューブに収納されるため、ロッドの昇降は必要ありません。
そのため、深い地層の掘削において大幅な時間短縮が望めます。

表層地盤の調査にはオーガーボーリング

表層地盤の地質調査にはオーガーボーリングが適切です。
ただし、比較的柔らかめの土壌で深度10m程度の条件がつきます。

すべてのボーリングの種類の中で最も簡易な施工法です。

2つの種類があり、人力による小型のオーガーをハンドオーガー、バックホーなどに取り付ける大型をアースオーガーと呼びます。

ハンドオーガーは試料の採取や下孔開け、アースオーガーは建物の基礎杭の施工などに採用されます。

ボーリングによる地質調査の費用相場とは

ボーリングによる地質調査の費用は15~30万円が相場とされています。
現場状況により複数箇所の掘削を必要としたり、掘削深度が増したりすると費用はかさみます。

新築物件の場合、地質調査費用がサービスされるケースもあるようです。
依頼する場合はハウスメーカーや建設会社など、より多くの業者に相談してみましょう。

まとめ

ボーリングによる地質調査の目的は、土壌が建造物を造るに適しているかどうかを調べるためです。
工事にはそれなりの費用がかかりますが、建築後のトラブルを考慮すれば必要なプロセスです。

施工方法は目的や土壌状況で異なり、中には人力でのボーリング工事もあります。
費用相場は15~30万円と決して高くはありません。

したがって、ボーリングによる地質調査をためらう理由は少ないでしょう。