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架空配線とは?架空線方式と地中化方式の違いや無電柱化の動向について解説
2023年06月22日
日本ならではの光景として、鳥たちが電線にとまって羽根を休めている姿をよく見かけます。
しかし、世界では、日本のように電柱に電線を通す方式ではなく、電線を地中に埋める方法が主流です。
2017年6月の「無電柱化推進条例」により、日本でも無電柱化の動きが開始されました。
しかし、電柱を無くすことに対しては否定的な意見も多数あります。
どうして日本では架空配線が無くならないのでしょうか。
架空(がくう)配線とは
電柱を使って、空中に設置された電線のことを「架空配線」と言います。
架空配線は気象の影響などで断線することがあり、企業活動や日常生活、交通などに影響を与えてしまいます。
また、経年劣化で細くなった電線は垂れ下がってしまう恐れがあり、漏電や感電のリスクが高くなっています。
そのため、架空配線は電線の状態を常にチェックし、経年劣化が認められたら即座に交換等の対応をしなければなりません。
架空線方式と地中化方式の違い
電線等の配線の引き込み方法には、架空線方式と地中化方式とがありますが、その違いを解説します。
架空方式
通常思い浮かぶのは電柱から電線で各家庭に配線が引き込まれている架空線方式の方でしょう。
架空線方式は工事がしやすく、費用が比較的かからないというメリットがありますが、
災害や鳥の影響を受けやすいというデメリットもあります。
地中化方式
地下にケーブル等を埋め込んで配線する方式です。
災害や鳥の影響を受けにくく、電柱が不要なので景観をそこねることもなく、歩道のスペースを少なくすることもありません。
一方、架空配線と比べて工事費用が高くなるのと、工事期間が長くなるというデメリットがあります。
架空配線の種類
電線には、高圧架空電線路用、高低圧架空電線路用、高圧引下電線用、低圧引込電線用、屋内配線用などさまざまなものがあります。
架空配線だけを見てみると、以下の種類があります。
OE電線
高圧架空電線路に使用される電線で、OE電線(屋外用ポリエチレン絶縁電線)を使用します。
ポリエチレンが絶縁体となっており、75℃まで耐えられます。
OC電線
こちらも高圧架空電線路に使用される電線で、OC電線(屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線)を使用しており、90℃まで耐えられます。
OW電線
低圧架空電線路に用いられている電線で、OW電線(屋外用ビニル絶縁電線)を使用しており、電柱と電柱をつなぐ電線です。
絶縁体には耐候性に優れたビニルを使用しており、色は黒色が標準です。導体には硬銅線(太いものは硬銅より線)を用いています。
架空配線の動向
最近の動向として、電柱を使用しないで電力や通信のサービスを供給する無電柱化(地中化方式)が検討されています。
日本では、2016年の無電柱化推進法により無電柱が推進されることになりました。
なお、無電柱化には大きく分けて以下の2種類があります。
① 電線類地中化
電線共同溝などを使って道路の地下空間に電力線や通信線などをまとめて収容する方法です。
② 電線類地中化以外の無電柱化
裏配線など、表通りから見えないように配線する方法になります。
無電柱化による期待
無電柱化による期待としては以下のものがあります。
1.災害に強くなる
台風や地震などで電柱が倒れると、道路がふさがるとライフラインが遮断
され、緊急車両の通行も不可能になります。
電柱類地中化により電柱が無くなれば、そうした被害とは無縁になります。
2.安全性が高くなる
電柱がなくなると、歩道が広く使え、子供が歩道の電柱を避けようと道路に飛び出すようなこともなくなり、ベビーカーや車椅子でも安全に移動できます。
3.景観がよくなる
道路上に電柱や電線が無いので、すっきりして街の景観がよくなります。
4.資産価値が上がる
無電柱化により宅地価格の査定アップが期待できます。
5.地域が活性化する
電線類地中化による知名度アップで、観光や経済効果のアップも期待できます。
無電柱化の課題
こうしたたくさんのメリットがある無電柱化ですが、課題やデメリットもあります。
主な課題としては以下のものがあげられるでしょう。
1.設備の維持管理が難しい
電柱を設置する場合は、工事前に電力会社、電話会社、ケーブルテレビなどの事業者に了解を得なければなりません。
また、電柱が立っている道路の管理者は、国道や都道府県道、市区町村道によって異なるため調整が大変です。
2.災害からの復旧が遅れる
架空配線は地上にあるため災害を受けやすいのですが、復旧の方は架空配線の方が早いとされています。
架空配線は地上にあるため、断線箇所を見つけるのが容易です。
しかし、地中に配線がある場合は、掘り返してみないとどこで断線しているのか分かりづらいため、復旧が遅くなります。
3.費用がかかる
地中にあるガス管、水道管とのかねあいや、場所による方式の違いもあって、架空配線にくらべて3倍~10倍ほど費用が高くなります。
まとめ
最近は地中に配線を通して電線をできるだけ少なくしようという流れが起きていますが、それでもまだまだ日本には電線が多いです。
いまだに無電柱化が進まないということは、何かしらの問題が考えられます。
改めて架空配線のメリットや無電柱化のデメリットを検討することが必要です。
また、既存の建物や障害物があることを考えると、埋設することができない場所も現実にあるため、完全に無電柱化するのは困難でしょう。
電柱は無くすのも残すのも、いずれも長所・短所があるため、簡単に答えは出せません。
やみくもに電線地中化するのではなく、しっかりとした議論を重ねたうえで、明確な方向性が示されることが期待されています。