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架空配線とは?種類や役割、架線工事について解説

2023年05月10日

架空配線という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
聞き覚えがないかもしれませんが、実はとても身近なものです。
架空配線について、種類やそれぞれの役割、使われている材料、架線工事の内容などを解説します。

架空配線とは?種類や役割、架線工事について解説

架空配線とは

発電所で発電された電気は、電線を介して各家庭へと運ばれています。
一般に電線と言っていますが、正式名称は「架空配線」。

「架空」は「架空請求」という言葉に使われるように、実際には存在しないものという意味もありますが、ここでは「空中に架ける」ことを意味します。
架空配線は、架空電線や架空配電線と言うこともあります。

架空配線の種類

架空配線を見てみると、1本の電柱に何本もの架空配線が引かれていることが分かります。
一番上に張られた架空配線は「架空地線」といって、避雷針の役割を果たしています。
雷を誘導することで、電柱の他の配線や機器に雷の電気エネルギーによるダメージを回避するためのものです。

架空地線の下に横並びで3本並んでいるのは「高圧配電線」で、その名の通り、6,600Vという高圧の電気を送っています。
そのさらに下に縦に3本並んでいるのが「低圧配電線」で、100Vと200Vの低圧の電気を運んでいます。
高圧配電線と低圧配電線を結ぶのは「高圧引下線」と言い、高圧配電線の高圧の電気から変換された低圧の電気を送電しています。

一番下にあるのが「低圧引込線」と言って、電柱から各家庭へ電気を送る架空配線です。
電柱間の3本の電線を連結しているロープのようなものは「落線防止機材」といい、どれか1本の電線が切れても地面に垂れ落ちないようにするためのものです。

電柱の設備の種類

電柱には電線だけでなく、様々な機器が取り付けられています。
白い円盤が連なったような見た目の「碍子(がいし)」は、架空配線から電柱へ電気が流れて感電しないようにするための絶縁体です。
電柱の上方にある円筒形の「柱上変圧器」は6,600Vの電気を100Vまたは200Vに変換する役割を持ちます。

柱上変圧器のすぐそばに取り付けてある小さな細長い「高圧カットアウト」は、雷などで異常な過負荷がかかった時に電気を遮断し、柱上変圧器を保護するものです。

架空配線の材料

電気は発電所から各家庭に届くまでに、電気抵抗によってロスが生じてしまいます。
電気抵抗が大きいほど、運ばれている最中に電気が少しずつ失われ、各家庭に届くまでに発電所での発電量よりも電力が減ってしまうのです。

そのため、架空配線の材料には電気抵抗の少ない銅やアルミニウムが主に使われています。
架空配線は電柱の碍子によって絶縁されているため、絶縁体や保護用の材料で覆われていない「裸線(はだかせん)」がよく用いられています。

低圧配電線には「鋼心アルミより線」を用いた屋外用ビニル電線がよく採用されています。
鋼心アルミより線は中心部が亜鉛メッキ銅線で、その周りを硬アルミで何重にもよりあわせたものです。
低圧引込線に使われるのは「硬銅線」や「硬銅より線」を用いた引込用ビニル電線が主流です。
硬銅線は強度が高く、硬銅より線は柔軟性にも優れているのが特徴です。

架空配線は太くなるほど電気抵抗が少なくなり、「許容電流」も大きくなります。
許容電流とは、配線に流すことのできる最大の電流で、許容電流が多いほどたくさんの電気を送電することができます。
また、許容電流を設定することで、配線の電気抵抗による発熱から来る絶縁皮膜の溶解や電気の短絡を防ぐことができます。

架線工事の内容

架線工事とは架空配線を電柱から電柱へ架けていくことですが、架けて終わりではありません。
架空配線は年月が経つにつれて自然と劣化していきます。
劣化で線が細くなっていないか、たるみすぎていないかなどのチェックとメンテナンスが欠かせません。

ちなみに架空配線を一直線にピンと張ると電柱に大きな負荷がかかってしまうため、わざと少したるませています。
その他にも新たな機器を取り付けたり、古くなった機器を交換したりといった工事も架線工事のうちです。

また、架空配線にかかりそうな木の枝を剪定したり、電柱に鳥の巣が作られていないか、作られている場合は巣の撤去をしたりと、電力供給に支障が出ないよう、手作業によるメンテナンスが日々行われています。
台風や地震で架空配線が切れたり、機器が故障した場合には、電気復旧のために迅速に作業に取り掛からなければいけません。

まとめ

架空配線の種類とそれぞれの役割、材料、架線工事について解説しました。
電柱を地中に埋設する「無電柱化」を進めようという意見が大きくなっていますが、既に建物が立っている場所に電柱を埋めるのは困難で、これからも従来の電柱は使われていくでしょう。

日常的に滞りなく電気が使えるのは架空配線のメンテナンスを行っている会社の努力によるものです。
電柱を見かけた際は、架空配線の大切さや奥深さを感じてみてはいかがでしょうか。